プロジェクションマッピングの仕組み

いつから可能になった技術なのか

 言葉の定義からいえば、投影してスクリーンと関係があればいいのでOHPでも影絵でもできますから昔から同じようなことはあったと思います。
映像と現実とのシンクロ、2つを合わせて1つのコンテンツに見せるという手法でいえば、アニメーションの発明とほぼ同時に行われ始めています。

1914年「恐竜ガーティー 」と言う作品ではアニメーションの恐竜をスクリーン登場させその前に実際の演者があらわれ、その恐竜とやり取りをするといったパフォーマンスがありました。お辞儀をさせたり、餌をやったり最後には演者がスクリーンの中に入ってしまい、彼もアニメーションとなって恐竜と去っていきます。

驚くべきことに現在プロジェクションを使ったパフォーマンスと同様のことは既に行われていたのです。

簡単に説明すれば、映像だけで完結させない表現として考え出された、いわゆる「コロンブスの卵」的発想ですから個人で制作していた人は昔からいた思います(当社の代表は1994年頃から制作していました)。 それが現在注目されるようになったのにはプロジェクション技術の発展があります。非常に高解像度で高輝度のプロジェクター開発されたために、巨大な建築物にも映像を投影できたり、実物と間違えてしまうほどの画質を投影できるようになりました。また映像の補正技術も進化して、複雑な形状の補正が可能になりプロジェクションマッピングを制作することの技術的ハードルが下がったためだと考えられます。

▲ 『恐竜ガーティ』ウィンザー・マッケイ

プロジェクター プロジェクションマッピング

実施するのに必要なものは

 勿論プロジェクターは必要です。勘違いされている方も多いのですがプロジェクションマンッピング用のプロジェクターというものはありません。

通常の映像を映すプロジェクターですので、学校や会議室などで使われているものと同じもので問題ありません。ただし大きな画面を投影するためには高輝度のプロジェクターが必要となりますので、大きく高額なものが必要になってきます。

加えて再生するための機械(プレイヤー)が必要です。プレイヤーにはさまざまあり、PCに専用のアプリケーションを入れたものや、高度な画像補正に加え動画編集までできる高性能なメディアサーバという専門の機材もあります。補正を事前に計算していて投影時に補正の必要がなければ、動画再生ができるものであればなんでもかまいません。当社代表がプロジェクションマンッピングを始めた20年以上前にはそのようなソフトが無かったので事前にすべて計算しDVDプレイヤーで再生していたこともあります。プロジェクターとプレイヤーがあれば映像を投影できるので実施可能です。またスピーカーなどの音響設備も必要な場合があります。

技術概要

プロジェクションマッピングは、スクリーンとなるものの形状に合わせた(意識した)映像を制作しプロジェクターでその制作した映像を投影し、スクリーンと合わせることで成立させます。 スクリーンを意識した映像を合わせることで、スクリーン自体が変化しているような錯覚を与えています。

しかしどんなにスクリーンの形状と同じかたちに映像を制作しても、プロジェクターの投影位置やレンズの歪みなどでずれてしまいます。これをプレイヤー(映像を再生する機械)などで補正してスクリーンに合うように(マッピング)しています。この補正技術が充実したことにより複雑な形にもマッピングできるようになりました。

もちろんプロジェクターがより強い光で投影できるようになったため巨大なものにも投影できるようになったり、高解像度になったためにスクリーン形状にピッタリと合うようになったこともプロジェクションマッピング技術のベースとなっています。

飛び出てみえるのはなぜか。

・カメラと鑑賞者の関係 プロジェクションマッピングのコンテンツにはまるでそのスクリーンが動いているかのような錯覚を与える演出が多く使われます。プロジェクションマッピングといえば、このようなイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。このような表現はどのように作られているのでしょうか。答えは簡単です。鑑賞者(見る人)からみて、そう見えるように(例えば飛び出たように)、描いている(映像を作っている)のです。鑑賞者に対して正しい(リアルな)立体感がある映像を見せることで、まるで実際に起っていることのような錯覚を生み出しているのです。ですので、プロジェクションマッピングでは「鑑賞者がどこからみるか」ということを設定して制作します。つまり本当に正確な立体感で見ることができるのは一人の鑑賞者だけです。

鑑賞距離を考えて制作しなくてはいけない

 ではなぜ多くの人が立体的に見えるのでしょうか。

これにはいくつか理由があります。まず一番の理由は鑑賞距離が離れていることです。

大きな建物などへのプロジェクションマッピングはこれになります。
非常に離れてみるので、鑑賞者同士の位置の違いはごく小さな差になりますので、立体が正しく見えるのです。 しかし、鑑賞距離が短くさらにスクリーンの左右や上下に鑑賞者がいる場合が少なからずあります。この場合は、立体の違和感を感じさせないように動きや画を工夫します。
鑑賞者の位置やスクリーン形状、コンテンツ内容などによって、様々なテクニックをつかい解決します。このテクニックがないと違和感を感じるものになりリアルに感じられなくなってしまします。

でも立体にみえてるよね・・・

「テーブルの上に小人が現れ料理をつくるといったプロジェクションマッピングがやりたいと」というお客様が多くいます。

YOUTUBEなどで事例をみたのでしょう。残念ながらこれは(想像されているような)実現できません。

正確に言うと同じものを作っても、肉眼では立体的にみえません。これはカメラで撮影したものだからです。
人間の目は2つあり立体を正確にとらえられるよになっています。撮影するカメラは1つのレンズで撮影するので立体を正確にとらえることができないのです。

そのためにプロジェクションした映像の立体感が正しいと思ってしまうのです。
これは鑑賞距離が離れている場合にも同じことがいえ、眼と眼の離れ方に対して見ているものがとても遠いいので1つ目で見ている状態に近いのです。
だまし絵をみたことのある方なら理解できるのではないでしょうか。

カメラと人の目の違いが理解できない方に

非常におもしろい工作があります。「首振りドランゴン」と言われいる錯視(ホロウマスク錯視)を使った工作です。顔の部分の立体が逆に作られているために、動かないはずのドラゴンが首をふりこちらを常に見ているというものです。 これは、カメラ越し(携帯のカメラでいいです)にみたり、遠くからみると成立します。ネタバレを含む動画や、実際の工作ができるものがネットに公開されていますので、是非検索して試して見て下さい。

プロジェクションマッピングの作り方

実際につくるときは 平面的に作る場合(スクリーンの立面図などから)と3D(スクリーンの3Dモデルなどから)的に作る場合やそれを合わせながら制作する場合がありますが、ここでは理解しやすく3Dでの制作を説明します。

スクリーンの3Dモデルを制作しそれをアニメーションさせます。
これを映像ファイルにして実際に投影する映像コンテンツを制作します。

このときに気をつけることはレンダリングするときに使用するカメラ(つまりどこから見た画なのか)は実際の鑑賞者と同じ位置にしなくてはいけません。

実際の鑑賞者と同じ位置からレンダリングすることで正しい立体感のあるコンテンツになるのです。もちろんカメラの設定が肉眼に近いほどリアルになりますが、それではスクリーン全体が収まらないなどの問題も発生します。また鑑賞者の位置がバラバなことがほとんどです。それをどう処理するかは・・・企業秘密です。

カメラとプロジェクターの関係

 現場ではプロジェクターから制作した映像を投影します。プロジェクターの理想の設置位置は鑑賞者の位置です。

仮想空間でのカメラ(レンダリングカメラ)の位置と実際の鑑賞者の位置と実際のプロジェクターの設置位置は同じであることが理想です。

なぜならカメラとプロジェクターは同じようなことをしています。カメラ(レンダリングカメラ)から取り入れたものをプロジェクターから投影するということは、入ってきたものを出しているので、理屈的には(レンズが同じならば)ピッタリともとに戻るのです。

ですので、実際の世界でもカメラで撮影し、それと同じ場所にプロジェクターを設置し、その画像を投影すると、撮ったもとと投影したものはピッタリと同じ位置に重なるはずです。

しかしながら、そのような位置にプロジェクターを設置することはできませんし誤差もあります、レンズの個体差もあります。これを実施時に補正して投影して成立させています。

マッピング作業

補正の限界

実際にプロジェクションマッピングをするときには、かなり補正をかけていることが多いです。
ところが補正をかければかけるほど、映像は劣化します。

解像度が低く補正を強くかけるほど画質を荒れていきます。その分高解像度でつくることは、コスト的にもマシンへの負荷を考えても現実的とはいえません。必要な解像度と画質そして補正を最小限に抑えることが重要です。

これはここで述べたプロジェクションマッピングの理論を十分に理解し、さらにハードウェア知識と映像演出のアイディアに加えスクリーンの特性などを考慮することが必要です。当社は、補正機能がない時代からプロジェクションマッピングを制作していますので、ほぼ補正無しで成立するデータを制作することができます。

上記以外に「実施環境」「スクリーンの形状と表面素材の特性」「投影ピクセルサイズ」など多くのことを考慮して制作することが、クオリティ向上には必要です。「とりあえず作れる」「ハードにまかせとけばマッピングできる」などといった取り組み方では、表現の幅もクオリティも限界があります。仕組みを理解している上でコンテンツを制作することで様々な表現が可能になるのです。