設計力・技術力で解決

投影シミュレーションが必要な理由

プロジェクションマッピングにはプロジェクターを使います。鑑賞者はそれを知っていても思わずプロジェクターを探してしまうのですが、この時にプロジェクターを発見できないとより不思議に感じるのです。

プロジェクターの特性を考えるとスクリーンの正面から投影するのが最も明るく画質の劣化も少なくなりますが、その位置は観賞者にとって最適なビューポイントであり、しかも高輝度のプロジェクターは大きく、そして冷却のために大きな音がします。これは観賞者にとって快適な環境とは言えません。

さらに、そのような位置に設置すると、コンサート等では動員数を減らさなくてはならない場合もあります。コンテンツ以外の部分ですが、プロジェクションマッピングにおいてはプロジェクターの設置位置もクオリティを左右します。

また基本的には、観賞者から見える範囲内には、投影できない部分を作らないように考えなくてはなりません。

投映角度によって影になる部分を他のプロジェクターで補いながらプロジェクションマッピングする必要があります。
特に日本の場合は狭い空間での実施が多いため、プロジェクターのレンズに短焦点を使用する場合が多く、影ができやすいため、高度な設置設計が求められるのです。 既存の物体に投影する場合はそこから投影位置を導き出しますが、造作物を設ける場合はやはり造作物とコンテンツ、投映位置などをすべて同時に考えていくことで、より高度な表現とクオリティアップが可能です。具体的には、少ないプロジェクターで多くの面への綺麗な投影、映像コンテンツの見栄えの良い立体スクリーンの設計などです。

メディアリウムでは投影位置とスクリーンの関係は重要で、設置設計とスクリーンの設計を同時に考えることでコンテンツの自由度を飛躍的に向上させています。

プロジェクションマッピング シミュレーション
プロジェクター投影

空間的な問題を解決し、よりクオリティの高い投影へ

通常の映像制作とは大きく異る必要不可欠な2つのポイントがあります。
まず、プロジェクターとそれに付随する多くの機材の知識や経験。次に、対象物を分析する能力です。

 

● どの程度の明るさのプロジェクターを採用するか
● 再生する機材は何が適切か
● どのような周辺環境をつくるか
● 対象物をどのような形状や材質にするか
● 建物や既存のものに投映する場合の測量

 

このようなことを技術面からだけでなく、コスト面や安全面、機材システムの安定性、コンテンツの再現性、法律的な面などから多角的に検証する必要があります。
その検証作業を私たちは「設計」と呼んでいます。

設計を行うためにはプロジェクションマッピングの実績だけでなく、空間をどのように構成して演出するかといった経験が重要になってきます。
建築やインテリアなどを通して空間やプロダクトのデザインを手がけてきた経験と、多くの関係者と多くの制約があるプロジェクトをマネージメントしてきた経験から、最適な「設計」とデザインを行います。

投影シミュレーションの重要性

通常の投影と違いスクリーンとなる物体が単一の平面ではありません。また大きさや形状は多岐に渡ります。

そのことにより、きれいに投影するためにはいくつものハードルがあります。私たちはそういった問題をクリアするために、対象物、会場、プロジェクターなどの実際の環境をすべて3D空間でシミュレーションし、投影が必要な部分にはすべて映像が映り、なおかつ調整の時間が非常に短縮できる方法を取っています。

さらに立体面への投影による映像の歪みが原因となって発生する画質の劣化も抑えて鮮明な映像を投映することができ、プロジェクターの設置位置の自由度と正確さも高めています。 今までイベントなどはmm単位の精度が要求されることはほとんどなかったために、スクリーン制作やプロジェクターの設置の誤差が大きい場合が見受けられますが、これは観賞者との距離が近い場合には致命的な結果を招きます。

プロジェクションマッピング チェックリスト
プロジェクションマッピング 画質

表現の幅やコストまで変わる

プロジェクターの光は光源から四角錐状に広がっています。そのため投影範囲内にスクリーンが収まっていても、入射角度によってはピクセルが伸びてしまい十分な解像度が得られない場合があります。

その他にも通路などの動線や他の物体が投影を遮らないか、スクリーンと観賞者との距離や視野角などを考察し設計しなければなりません。
このように非常に空間的に考慮しなくてはならないことが多いので、事前のシミュレーションは重要です。

設計が決まるとプロジェクタースペックが決まるのでコストの振り分けも自然と決まってきます。
もちろん予算のバランス、コンテンツなど他の要素とほぼ同時に考えなくていけない作業ですので、「コストが合わない」「コンテンツでカバーできない」などにより何度も設計を変更することは珍しくありません。

設計とその他の要素を同時に考えることで、コストパフォーマンスに優れた高度なコンテンツが実現できるのです。

影をつくらない

影を作らず映像でスクリーンを包み込む 現在実施されているプロジェクションマッピングはほとんどが、スクリーンとなる物の正面から投映しています。

しかしそれではスクリーンとなる物の形状によって、多くの投影できない部分が発生します。
シアタータイプのプロジェクションマッピングの場合、鑑賞者の見る場所を限定したり離れた場所から観賞することによって、このような影になる部分が目立たないことが多く、影を考慮せずに実施されているケースが多くあります。

しかしながら日本ではステージを取り囲むように幅が広く座席を配置していたり上下方向の視差が大きくなります。
メディアリウムでは、複数台のプロジェクターを利用し影となる部分を作らず、映像で物体を包み込む技術を使用しています。

このような状態にすることで、鑑賞者がスクリーンを自由な方向から見ることが可能になります。
これは単純なプロジェクターの配置の問題だけではありません。だまし絵の技法を合わせる場合はその観測点をいくつ設定するか、各プロジェクターのブレンド位置(繋ぎ目)はどこに設けるか、またそのような事を可決するためのスクリーン形状の設計など、考慮すべき点は多岐に渡ります。

詳細な設計とコンテンツ制作によって初めて成り立つメディアリウムならではの技術です。

プロジェクションマッピング 影
プロジェクションマッピング 超短焦点プロジェクター

短い投影距離でもマッピング可能

近くから大きな画面を投影できる超短焦点プロジェクターは驚くべき技術です。

しかしレンズの歪みが大きいためマッピングが難しく、また映像のピントも合わせづらくなります。さらに映像の投影角度が急なため、わずかな凹凸も大きな影となり予想もできないような投映結果となります。

まさにプロジェクションマッピングが不可能と思えるほど多くの問題点がありますが、メディアリウムはこの不可能とも言える超短焦点プロジェクターによるプロジェクションマッピングを可能にしました。

以下の事例(※クウジット株式会社様との共同開発)ではケースの中に3台のプロジェクターが設置されており、鑑賞者からはプロジェクターの存在はほとんど意識されません。
また、各プロジェクターの投映距離は非常に短く、80cmもありません。

このようなコンパクトなプロジェクションマッピングもメディアリウムの技術により実現可能です。

十分な投影距離が確保できない、観測者が壁になるなど、日本の実施環境は通常のプロジェクションが困難な環境が多くあります。
メディアリウムは、これを解決し新しい用途や活用範囲が広がる技術です。

ミュレーションでも難しいこと

メディアリウムは空間演出ですので、鑑賞者の動線や投影の障害となるもの、またその場所ならではの魅力的な演出のため現場調査を行います。

特に特殊な素材や環境ではコンピューターによる事前のシミュレーションでも難しい場合があります。

スクリーンとなるものの素材は幅広く、きれいに映像が映るとはかぎりません。また人によっても明るいと感じる輝度は様々です。
そこで実際に投影をしてみるのが一番確かなことなのですが、購入前の検証や大型のプロジェクターの場合など実施の難しい場合が少なくありません。 そこでメディアリウムでは、計算により小型プロジェクターで様々な明るさをシミュレーションし、実機を用いることなく明るさの検証と確認をしています。本番用の大型プロジェクターの準備や設置を必要としないため、大掛かりにならず短時間で調査することができます。

プロジェクターシミュレーション

映像コンテンツはマッピング方法まで考慮して制作する

メディアリウムでは映像のデザインだけでなくスクリーンの製作や監修も行います。

これはスクリーンに映像をマッピングした時に、僅かな凹凸でも影が発生し最終クオリティに大きく影響するからです。
シミュレーションだけでなくリアルな現場での対応を見据えたコンテンツの制作ディレクションにより通常のフローでは不可能なコンテンツを作り上げています。

そこで実際の製作から責任をもって行うことで最高のクオリティを保証するものです。 もちろん現場での取り付け方法なども大事です。
時間の経過によってマッピングがズレを生じてきたり、数センチ間違った場所にプロジェクターを設置したことで、映像の質が大きく低下したり、最悪の場合は影の発生やスクリーンに映像があたらない部分がでてしまします。

このような現実の現場でおこることはシュミュレーションだけでは予測できません。多くの経験から予測できる力とその解決方法を知っていることが大事です。

下記はマッピング方法の種類です。その多くは案件の特性から考えだした自社独自のものです。

 

【マッピング手法】

・ジオメトリック補正

投影の際にプロジェクターや再生機に付属の機能で補正すること

 

・切り出し補正

完成した投影ファイルを部分的に切り出し、それぞれ別に補正しマッピングすること

 

・レイヤバラ補正

切り出し補正をさらに複雑にし、投影ファイルの位置に加え映像内容によっても切り分けてマッピングすること

 

・UVモデルマッピング

スクリーンの3Dモデルにテクスチャとして投影コンテンツを貼り付け、3Dモデル(またはレンダリングカメラ)を移動回転などして補正しマッピングする方法

 

・オートマッピング

再生機にカメラやセンサーを接続しジオメトリック補正を自動処理すること

 

・事前補正

プロジェクター設置図から歪みを計算し、事前に映像に歪みをかけ制作すること。最初から補正されたデータを制作するために画像劣化がほぼない。

 

・現場制作

図面化不可能なスクリーンや予測不可能な現場の場合におこなう「わからない部分は、もう現場でつくってしまえ」という最終手段。

 

上記の補正方法を組み合わせ、現場での作業時間を極限まで短縮して望むのはもちろん映像の制作時にすでにマッピング方法について考えておかなくてはいけません。
映像は制作したけど、実施してみたら予想していたようには見えない・・・という話もよくききます。

映像のクオリティがよくてもその魅力を十分に伝えられないということが無いように制作をトータルに考えなくてはいけません。